ご挨拶

第28回日本在宅医療学会学術集会開催にあたってのご挨拶

第28回日本在宅医療学会学術集会
会長 飯島 勝矢(東京大学 高齢社会総合研究機構 教授)

わが国は世界の他のどの国も経験した事のない超高齢社会に向かっており、2005年から2030年までに後期高齢者人口が倍増し、同時に認知症や独居高齢者も激増していきながら多死時代にも突入する。その大部分は大都市圏で著明となるが、そこで起きる未曽有の高齢化問題はこれまでの地方圏の対応・対策の延長だけでは限界にきており、わが国の医療政策が問い直されている。そして、幅広い視点から医療・介護提供体制を大きく進化させていく時期にも来ている。その意味では、多面的な視点からの社会的なイノベーションが急務である。

国の方針として地域包括ケアシステムが打ち立てられ、かなり年数が経過した。なかでも在宅医療を軸とした地域医療の底上げと医療介護連携に重きを置き、全国の各地域で進めてきた訳だが、地域ごとの進捗や気運の醸成の具合を聞いてみると、当然ながら幅がある。高齢期であってもいかに生活の質を保ち、よく生き切って人生を閉じることができるかという時代の要請に応える医療が今まさに求められている。そこには「病人である前に『生活者』である」という理念の下に、住み慣れた地域全体で生から死までを支え、みて(診て・看て)いくという地域完結型の医療への進化、そして機能分化型のシステム型医療へのパラダイム転換が求められる。すなわち従来の「治す医療」から『治し支える医療』という原点に立ち返る必要があり、その象徴的存在がまさに在宅医療であろう。

さらに強調するならば、本学術集会において掲げたテーマ『病気を診る、人を診る、家を診る、地域を診る』のように、医師も中心人物の一人となって、全職種によるシームレス(切れ目のない)な現場を作り上げ、まさに今まで培ってきた「連携」から『統合』へギアを上げ、セカンドステージに入っていくことが望まれる。その基盤となる真の地域包括ケアの改革が進むかどうかは、医療・介護関係者、行政、そして市民も含めた「まちぐるみでの活性化」が上手く進むかどうかに大きくかかっている。

本学術集会では、わが国の在宅医療の第一人者の先生方から現場で日々取り組んで下さっている方々まで、幅広くお声をかけご参集頂けることとなった。先生方の実践的かつ先進的な取り組みも含め、現在の活動内容そして今後の展望と課題を本学術集会において大いに述べてご討議頂きたい。最後に、本学術集会のプログラムを構築するにあたり、数多くの先生方のご協力を頂き達成できた。この場をお借りして御礼申し上げたい。そして、ご参加された全ての方々の手によって、わが国の在宅医療そして地域医療が素晴らしいセカンドステージに入っていくことを願って大会長の挨拶としたい。

平成28年7月吉日