会長挨拶

第68回日本病理学会秋期特別総会を開催するにあたって

会長

会長 岩手医科大学医学部病理診断学講座
菅井 有

 2022年11月17日(木)、18日(金)の両日に盛岡で第68回日本病理学会秋期特別総会を開催します。副会長は本学の片岡竜貴教授、入江太郎教授にお願いしました。学会のキャッチフレーズは『突き抜ける病理学-Breakthrough and innovation in Pathology-』とさせていただきました。このタイトルには日本病理学会が本邦の学会を先導する先端的な未来を予感させる意味を持たせたつもりです。

 秋期特別総会は、定型的な内容が主体ですので、会員にとって驚くような奇抜な内容が用意されている訳ではありません。しかし、これまでの地道に行ってきた優れた体系的な研究内容を会員に周知する貴重な学術集会です。このような形式の学会を定期的に開催している学会は極めて少なく、病理学会独自の開催様式とみてよいと思います。その中心は学術研究賞のA演説、症例研究賞のB演説、病理診断特別講演で、これらは学術委員会の厳密な審査により選抜されています。

 A演説は以前より教授の登竜門とされており、これを受賞することが独立した研究者としての証し(あかし)のひとつと見做されています。B演説は症例中心の演題で、組織像の解釈が得意な病理医にとっては重要な内容を含んでいると思います。病理診断特別講演は病理組織診断のエキスパートによる講演で、単なる特定の疾患の病理診断の解説ではなく、世界的にも用いられている標準的な内容を自身の研究成果もまじえて解説を行うものです。会員にとって明日からの診療に用いることのできる実践的な内容になっています。

 また、会長が指定するシンポジウムも上記の講演に負けない豊富な内容を含んでいます。一つは”Evidence-based Pathology (EBP)の導入による新しい病理診断学の構築”で、落合淳志先生にコーディネーターをお願いしました。病理診断学の領域にもEBPの概念を取り入れ病理診断学の新しい方向性を提案する内容になると思います。2つ目は”トランスレーショナルリサーチにおける病理学の役割―現状と次世代に向けた取り組みについてー”で私自身が発案を行い企画しました。分子生物学を駆使した研究内容は一般の者には理解しにくい面を含んでいますが、今回の演者にはご自分の研究内容を噛み砕いてお話しいただくことをお願いしました。いずれのシンポジウムもその内容が最先端であることはもちろん、会員にとって裨益するところ大であると確信しています。また会員の先生方にご発表いただくポスター発表も優秀な内容になっていると思いますので、是非ご期待をいただきたいと思います。

 未だ新型コロナウイルス感染症が抑制されているという状況にはありませんが、このウイルスの特徴が相当程度解明されてきていることに加えて、ワクチン接種や抗体療法も登場し、2年前とは私たちが有する知識や治療手段に格段の進歩があります。専門家である我々医師がただ怖がっているのではポストコロナの道筋を描くことはできません。その意味もあって本学会は現地開催を主体にして、オンデマンド形式によるハイブリッド開催とさせていただきました。発表者、座長、役職者は全て現地に集合していただくことになります。

 11月の盛岡はやや寒い時期に入っていますが、美味しい食事や美酒が自慢の古都です。きっと会員の先生方にご満足いただけると思います。感染防止に最大の配慮を行って開催をさせていただきますので、どうかご理解の上、積極的なご参加をお願い申し上げます。

 最後に会員の先生方のご発展とご健康を心底より祈念して、私のご挨拶とさせていただきます。