会長挨拶
和を以て貴しと為す
第70回日本形成外科学会総会・学術集会
会長 貴志 和生
慶應義塾大学医学部 形成外科学教室 教授
この度第70回日本形成外科学会総会・学術集会を主催させていただきます。慶應義塾大学が総会・学術集会を開催させていただくのは、1989年以来38年ぶりであり、その重みに身が引き締まる思いであります。
テーマは、「和を以て貴しと為す」と致しました。現在、世界は混沌とした状況にあります。その中で日本は北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」の小舟のようで、日本形成外科学会はその小舟の中の積み荷のような感じといったところでしょうか。しかし歴史を振り返ってみますと、我が国はもっと大荒れの波の中でも歴史を紡ぎ、融和しひとつになることで乗り越えてきました。その神髄は建国と現在の半ばに聖徳太子が十七条憲法の第一条で唱えた「和を以て貴しと為す」であると思います。日本形成外科学会は、学会としては比較的新しいですが、学問としてはインド造鼻術に見られるように古い歴史があります。また、創傷治癒、血管解剖や微小循環を知りこれに基づいて正常に戻す手術を主に行っていますので、「外科系の生理学」であると思います。天才数学者の岡潔先生は、「春宵十話」の中で人生で最も大切なものは情緒であり、真・善・美を追求することであると書かれています。歴史上ほんの一握りの本当の意味での天才や芸術家、宗教家が真理が見え、歴史の圧に耐えて今でも残っているものがすなわち、今後も私たちが進むべき道のはずです。特別講演、招待講演では、そのような「見えて」いる先生方を各分野から多くお呼びしました。
今回は第70回の記念大会であり、このようなことから伝統を大切に、形成外科で扱っている分野を網羅して、それぞれにシンポジウムを組みました。シンポジウムは、指定演者の先生方を中心にそれぞれの分野でのこれまでの歴史のまとめを行い、新進気鋭の先生方とともに将来の方向性を指し示していただきたいと思います。
軸が見えてもそれを紡いでゆくには、個人だけは時間的・空間的に限界があります。方向性の合う人との共同研究は必須ですが、そのためには対面で話し合う機会が必要です。オークラを下見に行ったときに一番気に入った部屋は最上階の富士山の見える見晴らしのいい部屋でした。そのため、この部屋はすべて休憩室として開放し、富士山を見ながらの少人数での会合、懇親に使っていただきたいと思っています。
皆さん、春のうららのオークラで、和を以て貴しと為し、真・善・美の追求を行いましょう。