会長挨拶
本学術講演会のテーマは「めまい診療の標準化」です。よそにはない特殊な機器を用いる検査や特別な施設でのみ行える治療ではなく、どこでも、誰もが受けることができる信頼性の高い検査と治療を開発することが真の医療の進歩だと考え、今回のテーマを「めまい診療の標準化」とさせて頂きました。オリジナリティーが重視される研究と「標準化」は相反するように思われるかもしれませんが、独創的な研究が多くの追試を受け、標準化されてこそ真の医療の進歩だと考えると、これらは相反するものでは全くありません。
診断に関しては、PPPD、前庭性片頭痛、両側前庭機能障害、加齢性前庭障害、前庭性発作症など、かつての教科書には載っていない疾患の診断基準が相次いで策定され、「診断の標準化」が進んでいます。治療方法が異なるため、診断基準を熟知し、適切な治療を行うことが大切です。2021年、温度眼振検査に取って代わると考えられるビデオヘッドインパルス検査(vHIT)が保険収載されました。不快な自律神経症状を伴わず、比較的簡便に半規管機能を測定できるvHITは今後広く臨床に定着すると思われます。VEMPと組み合わせることで、我々は左右3つの半規管と2つの耳石器、計10個の末梢センサーの機能を評価できるようになりました。これらの検査を正しく行い、結果を正しく判断する「検査の標準化が求められます。治療に関しても、薬物治療だけでなく、前庭リハビリテーション、認知行動療法がおこなわれるようになってきました。メニエール病に対しては中耳加圧治療が保険収載され、鼓室内注入療法や内リンパ嚢開放術も行われています。これら、「治療の標準化」が最も重要と考えられます。
新規検査や治療を保険収載するためには、方法を標準化し、科学的なデータを提示しないといけません。本学術講演会において、めまい診療の標準化を通してこれらの動きが加速すれば、望外の喜びです。
海外からは、PPPDの診断基準策定に中心的な役割を担ったJeff Staab先生をお招きする予定です。
また、今回は新潟の気候を考え、例年より会期を少しはやめています。紅葉が美しい時期と重なります。ぜひ会期後の週末は、少し足を延ばして新潟の秋を楽しんで頂ければと思います。皆様と新潟でお会いすることを楽しみにしています。