会長挨拶

第40回日本嚥下医学会総会ならびに学術講演会
会長 塩谷 彰浩
(防衛医科大学校耳鼻咽喉科学講座 教授)

このたび,平成29年2月24日(金),25日(土)の両日,学術総合センター(一橋講堂)において第40回日本嚥下医学会総会ならびに学術講演会を開催させて頂くことになりました。伝統ある本学会を担当させていただき、大変名誉なことと存じますとともに,身の引き締まる思いをいたしております。また,このような機会を与えていただきました藤島前理事長、兵頭現理事長をはじめ,会員の皆様方に心から感謝申し上げます。

今回の学会では「嚥下医学のこれから」をテーマとしております。1981年に発足した嚥下研究会が2004年に日本嚥下医学会になり、本会で第40回目を迎えます。この脈々と続いてきた嚥下医学会を、40回目をターニングポイントとして見つめなおし、これからの嚥下医学を探索しようという主旨であります。本学会においても嚥下医学のこれからを見据えながら発表・討論が旺盛に行われることを期待しております。

特別企画に関しては,第40回記念講演を進武幹先生(佐賀大学名誉教授)にお願いしております。梅﨑俊郎先生(国際医療福祉大学)には副演者および司会をお願いしており、黎明期から現在に至るまでの嚥下医学会の歩みを振り返るとともに、今後嚥下医学会が歩むべき道を考える上での大きなヒントになると思っております。

兵頭理事長には、理事長ご就任後の最初の総会ということもあり、理事長講演「日本嚥下医学会の歩みと社会的役割」をお願いしております。本学会の歴史を踏まえて、今後の方向性や学会としての責任などをお話しいただく予定となっております。

シンポジウムは2つ企画いたしました。1日目には山脇正永先生(京都府立医科大学総合医療・医学教育学)のご司会で、今までの嚥下医学会でのシンポジウムでは取り上げることがなかった「認知症と嚥下障害」をテーマに行います。我が国では高齢化の加速に伴い、認知症高齢者はますます増加すると推定されますが、認知症と嚥下障害の関連性は未解明な点が多く、これからの研究の進展が待たれる分野でもあります。今回は認知症総論やEBM、対応の実際に至るまでを多面的に議論していただきます。

2日目には藤本保志先生(名古屋大学耳鼻咽喉科)のご司会で「"機能温存"治療後の嚥下障害とその対策」を行います。頭頸部癌の治療においては、喉頭機能温存が望まれることは言うまでもありませんが、喉頭機能の中でも嚥下機能の維持が最も重要かつ難しい課題と言えます。本シンポジウムでは機能温存手術や化学放射線治療後の嚥下障害についてどのようにマネージメントすればよいか、各治療法別にエキスパートに討議していただきます。

教育セミナーは嚥下医学に関連深いトピックスを3つ企画いたしました。藤島一郎先生(浜松市リハビリテーション病院)には「嚥下障害のリハビリテーション(仮)」を、小林靖先生(防衛医科大学校解剖学)には「咽頭・喉頭の特殊性:境界を担う構造として」を、辻哲也先生(慶應義塾大学リハビリテーション医学)には「がんリハビリテーション-頭頸部がんを中心に」をそれぞれのご専門の立場からご講演いただきます。どのセミナーも大変興味深く聞き逃す手はありません。是非ご参加下さい。なお、本セミナーは新専門医制度に準拠した耳鼻咽喉科領域講習として行われる予定です。

さらに,要望演題「私の手術」も企画しております。嚥下に関わる手術としては嚥下機能改善手術や誤嚥防止手術などがありますが、他にも頭頸部の手術の際に嚥下機能を保つための工夫をされることもあるかと思います。嚥下にまつわる手術において各自で工夫されている点や手技に関して手術ビデオをご提示いただき、そのよさをアピールしていただきたいと思います。

ポストコングレスセミナーは、「病態に基づく摂食嚥下訓練」をテーマとしました。嚥下訓練では、臨床症状を適切に捉えることと同時に正確な病態把握が重要となります。今回は、嚥下障害を呈する代表的な疾患(脳血管障害、神経筋疾患、頭頸部癌、食道癌、誤嚥性肺炎)を取り上げ、各分野のエキスパートの先生に、病態に基づく治療・訓練・対応等について最新の臨床知見を含め披露いただきます。実際に訓練にあたる言語聴覚士のみならず、訓練に関わる医師においても有益な内容になると確信しております。

現在教室員一丸となって,先生方のご期待に少しでも添えるように鋭意準備を進めておりますが,会の成功は会員の先生方のご協力にかかっておりますことは言うまでもございません。何卒盛大なるご支援をお願い申し上げますとともに,沢山のご参加をお待ち申し上げております。