会長挨拶

第116回日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会開催にあたって

第116回日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会
会長 小川 郁(慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科)

平成27年5月20日(水)〜23日(土)の4日間、東京国際フォーラムを主会場として第116回日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会を主催することになりました。慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室としましては、昭和26年の第52回を故西端驥一教授が担当したのが最初で、北里講堂で総会・学術講演会が開催されました。その後、昭和59年に故斉藤成司教授が第85回総会・学術講演会をホテルニューオータニで開催され、平成12年には第101回を神崎 仁教授が担当され、明治記念館と明治神宮会館で総会・学術講演会を開催されたことはまだ記憶に新しいことです。

この度、4回目の第116回日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会を15年ぶりに主催させていただくことは教室としましても大変光栄なことであり、現在、教室と同門会(慶耳会)をあげて鋭意準備を行っております。

宿題報告1は村上信五名市大教授による「ウイルス性顔面神経麻痺−病態と後遺症克服のための新しい治療−」、宿題報告2は宇佐美真一信州大教授による「難聴の遺伝子診断とその社会的貢献」です。いずれも国際的にも最先端研究の集大成であり、今から大変楽しみです。

シンポジウム1は「音声外科のすべて−過去から未来へ−」としました。今年は喉頭微細手術の50周年でもあり、福田宏之東海大客員教授による特別発言も予定しています。シンポジウム2は「感覚器の老化と抗加齢医学」です。平成28年には日本抗加齢医学会を山岨達也東大教授が主催されることが決まっており、日本耳鼻咽喉科学会としても初めて抗加齢医学をテーマとしたシンポジウムを企画しました。聴覚、平衡覚、嗅覚そして視覚の抗加齢医学についての最新知見を紹介していただきます。なお、視覚に関する講演は日本抗加齢医学会坪田一男理事長(慶大眼科学教授)にお願いしております。

パネルディスカッションは「頭頸部癌に対する低侵襲治療の新展開」としました。外科的手術、化学療法、そして放射線療法の見知から低侵襲治療についてディスカッションしていただきます。

特別講演1は岡野栄之慶大生理学教授による「iPS細胞技術を用いた中枢神経系および内耳の再生医学と疾患研究」で、山中伸弥京大教授がノーベル賞をとられたiPS細胞を用いた中枢神経系および内耳の再生医学の最先端を紹介していただきます。特別講演2は村木厚子厚生労働省事務次官による「男女ともに働きやすい職場を目指して」です。日本耳鼻咽喉科学会会員も女性が30%以上となり、男女共同参画は耳鼻咽喉科医療水準の維持および向上のために日本耳鼻咽喉科学会として取り組むべき課題ですので、初の女性厚生労働省事務次官としてどのようなお話をしていただけるか本当に楽しみです。

招待講演はD Bradley Wellingハーバード大教授による「Treatment Options and Outcomes in Vestibular Schwannomas」です。Welling教授は日本に滞在したことがある日本語も堪能な親日家であり、昨年ハーバード大の主任教授に就任されましたので、お祝いをかねてご招待いたしました。

臨床セミナーは「聴覚検査を復習する」、「めまいの治療をマスターする」、「耳鼻咽喉科実地診療における感染対策」、「副鼻腔炎診療Update」、「嚥下障害の在宅診療」、「PET-CTで何が分かる」、「耳鼻咽喉科医による聴神経腫瘍のマネージメント」、「小児滲出性中耳炎診療ガイドラインを理解する」、「高齢者の頭頸部癌への対応」、「経鼻内視鏡頭蓋底手術の進歩」の10タイトルです。各領域の最新知見を紹介していただきます。

また、今回はモーニングセミナーとして、Welling教授による特別セミナー「Surgical Tips and Pitfalls in Tympanomastoid Surgery」以下、「耳鼻咽喉科診療における基本外来処置」、「顔面神経手術」、「外鼻形成術と鼻中隔矯正術」、「頸部郭清術」、「日帰りで行う鼓膜形成術」、「人工内耳手術」、「扁桃・アデノイド手術」、「内視鏡下鼻内副鼻腔手術」、「経口的咽喉頭手術」といった耳鼻咽喉科処置および手術についての基本的かつ教育的講演の10テーマを企画しました。軽食を用意しますので、特に若い研修医や専修医には是非、参加していただきたいと思います。

ランチョンセミナーは日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会としてはこれまで最高の15テーマを企画しました。「難聴のリハビリテーション」、「甲状腺難治癌への挑戦」、「EBMがもたらす漢方医療の可能性」、「小児急性中耳炎への対応」、「睡眠障害治療の最先端」、「錯聴からみた聴覚のメカニズム」、「舌下免疫療法の実際と対応」、「耳鼻咽喉科における不安・抑うつへの対応」、「ムコ多糖症と耳鼻咽喉科疾患」、「頭頸部癌における薬物療法Update」、「脳はウソをつかない−脳波で判るあなたの真実−」、「最新のアレルギー性鼻炎診療」、「耳鼻咽喉科領域における新しい画像診断技術」、「急性感音難聴の新しい治療戦略」、「ここまで分かった睡眠のメカニズム」といずれも聞いてみたい内容であり、各日5テーマが並行して開催されるため、どれか1テーマしか聴講できないのが残念です。これらの特別企画の他に約570題の一般演題を予定しており、機器展示や書籍展示も併せて3日間大変充実した内容の学術講演会になるものと自負しております。是非、ご参加くださいますよう宜しくお願い申し上げます。

2020年のオリンピック開催が決まり東京も刻々と変貌しています。会場の東京国際フォーラムからは皇居はもとより、新しくなった東京駅や銀座も徒歩圏内です。東京の新旧のシンボルである東京タワーと東京スカイツリー、六本木ヒルズと新しく完成した虎ノ門ヒルズなど、日中だけではなく夜の素晴らしいイルミネーションもお楽しみいただけます。

なお、東京駅は開業100周年を迎えましたが、日本耳鼻咽喉科学会が創設された明治26年にその構想が生まれ、明治29年に建設が決定したそうです。また、同時期に開業した帝国ホテルでの会員懇親会を予定しています。このように今回の第116回総会・学術講演会では、明治時代の学会創設期を思い起こしながら最先端の耳鼻咽喉科学を学んでいただければと思います。それでは5月に東京国際フォーラムでお会いしましょう。