会長挨拶
第55回日本膵臓学会大会
会長 佐田 尚宏
(自治医科大学医学部外科学講座主任教授)
第55回日本膵臓学会大会を2024年7月25日(木)、26日(金)、JR宇都宮駅東口再開発で2022年新築されたライトキューブ宇都宮を会場に開催致します。真夏の暑いなかではありますが、膵疾患について、膵臓研究について、最新の情報を基に熱い議論をしていただくことを期待しています。
大会のテーマは「膵臓病学の均霑化」としました。2010年代前半に議論が開始された地域医療構想は、2014年成立した医療介護総合確保推進法により制度化され、団塊の世代がすべて後期高齢者になる2025年をひとつのゴールに設定しています。地域医療構想の骨子は医療機関の連携と役割分担で、限りある医療資源を有効に利用し、かつ日本全国の医療の均霑化を目指すことでした。膵臓疾患の診断・治療は専門性の高い分野で、外科において膵切除術、内科において膵臓内視鏡診断・治療は、それぞれの分野で最も難易度の高い手技のひとつに位置づけられていて、その治療成績向上、合併症率逓減は現在でも大きな臨床上の課題です。病理、画像診断、研究の分野においても膵臓病学は専門性が高く、日々新規概念が提唱され、日進月歩しています。この専門性の高い膵臓病学を日本全国どこでも均等にアクセス出来るような体制を作ることは、日本膵臓学会の大きな課題と考えています。日本膵臓学会では指導医制度を 2017年から開始しました。この指導医制度を基礎に、全国津々浦々に均一な膵臓診療を展開するための方法論についても議論を深められればと考えています。
私が所属する自治医科大学は、地域医療を考える大学です。地域医療構想では医師数、ベッド数など「量」を基準に考えられることが多いのですが、重要なのは「量」ではなく「質」であることは言うまでもないことです。「提供する医療の質の均霑化」を病院としても外科学講座としても重要なテーマと考え、その実現に向けて取り組んできました。膵臓病学においても「質」を評価することが重要です。学会大会の開催は「膵臓病学の質の均霑化」に寄与することが目的のひとつで、明日の診療、研究に役に立つような主題演題、プログラムを準備し、特に明日の膵臓病学の担い手である若手の方々のご来場を期待しています。
2019年末発生した新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延で、医療の世界だけでなく社会構造自体も大きく変化した感があり、学術集会の開催方法も大きく変容しました。有史以来、人類は多くの苦難を克服し、新たなイノベーションを基に社会、生活を最適化する努力を続けてきました。本大会は学術集会の未来を見据え、現地で情報交換し、開催地も楽しんでいただく従来の学会の良さに加えて、オンラインの利便性も考慮した大会にしたいと考えています。多くの方々のご参加と暖かいご支援をいただきますよう心からお願い申し上げます。