第11回日本運動器理学療法学会学術大会

大会長挨拶

運動器理学療法学の協創 ~本質の探求と探究~

第11回日本運動器理学療法学会学術大会
大会長 建内 宏重

 日本運動器理学療法学会は、2021年度に一般社団法人化されました。本邦に理学療法士が誕生してから半世紀以上が経過したこの時期に、理学療法の各領域はいよいよ独り立ちすることとなり、我々はアイデンティティを確立し社会に向けてもそれを示すことが求められます。
 アイデンティティは、他者との関係性の中で確立されるものです。言うに及ばず、実臨床においては、患者を中心に据えた他職種との連携のなかで、我々理学療法士の仕事が成り立っています。日本運動器理学療法学会が「運動器理学療法学」の構築を目指すとき、理学療法の他領域のみならず、医学や看護学など医療関連の専門領域、さらには、工学や情報学など医療以外の専門領域との関係性の中で、互いの守備範囲の明確化や強みの共有、また互いの融合による新たな領域の創出など、他者との協調そして協働を通じて、運動器理学療法学は育まれアイデンティティが確立されていくことが大切です。それが、本大会のテーマを「運動器理学療法学の協創」とさせていただいた所以です。
 運動器理学療法学を構築するための重要なアプローチとして、本大会のサブテーマである「本質の探求と探究」を挙げました。研究は、ときとして課題解決型研究と好奇心駆動型研究に分類されます。たしかに、我々は医療専門職であり、臨床への還元を求めて研究活動を行う際には明確な課題がありそれを解決するために研究を行います。介入研究などにおいては、我々が現実的にとり得る選択肢の中でどれが最善手かを“探求”することが一般的かと思います。しかし本来、研究はこのように単純に二分されるものではありません。課題を解決するための研究においても、それを担う研究者の知的好奇心や探究心が無ければ、研究活動は立ち行きません。また、これから運動器理学療法学を育んでいくためには豊かな土壌が必要であり、それは、会員一人一人の自由で挑戦的な問い、思考に他なりません。時間や既存の概念に縛られたものでも他者から与えられたものでもありません。本質を“探究”する姿勢こそが、学術活動を継続的に発展させていくエネルギーになります。このように、運動器理学療法学の構築には、本質を現実的に探求することと没頭的に探究することのバランスを取りながら進めることが大切だと考えています。
 このような思いのもと、本大会では、ご参加の皆様における自由で多角的な議論を重視したプログラム構成とする予定であり、時間の許される限り様々な議論が展開されることを期待しています。大勢の皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。

このページの先頭へ
Copyright © 第11回日本運動器理学療法学会学術大会 All Rights Reserved.