ご挨拶
第32回日本慢性期医療学会
学会長 矢野 諭
(平成扇病院 院長)
第32回日本慢性期医療学会は、2024年11月14日(木)、15日(金)に、パシフィコ横浜において開催されます。第12回慢性期リハビリテーション学会も併催となります。本学会のテーマは『“治し・支える”良質な慢性期医療~サイエンス・アートの調和と統合~』です。
新興感染症のCOVID-19対応でも再認識されたように、“治す”ことを目標に、臓器別専門性とともに急速な進歩を遂げた、従来型高度急性期医療の存在価値と重要性は今後も揺るぎないものです。一方、傷病構造の変化に少子化という特殊な背景が加わり、猛烈なスピードで到来したわが国の超高齢社会は、完治できない病気と共存しながら、Quality of Life(QOL)の維持・向上を目指す医療への発想の転換を求めました。それは、医療における「生活・介護」の視点の導入であり、“治す”主体の「病院完結型」医療から、患者の住み慣れた地域や自宅での「生活」の視点を重視した医療、すなわち地域全体で“治し・支える”「地域完結型」医療へのパラダイムシフトです。
しかし、決して「“治す”=急性期医療」、「“支える”=慢性期医療」ではありません。病院とは療養ではなく治療の場であり、慢性期病院も救急医療を含む一定レベルの“治す”機能を整備するのは当然です。一方、“支える”機能には「チーム医療」・「多職種協働」を基盤とした、リハビリテーション、栄養管理、排泄管理、認知症ケア、緩和ケアなど、慢性期医療では日常当然のこととして行われている、QOLの維持・向上を目的とした多くの領域が含まれます。しかし大多数の急性期病院では、しばしばこれらが軽視されています。加えて、急性期も慢性期も医療が存在する限り、「質」の評価・担保が求められるのは必然です。“治し・支える”医療の実践とは、当協会の理念と今回のテーマにある「良質な」慢性期医療の提供にほかなりません。
副題にある「サイエンス・アート」は“治し・支える”との対応を意識したものです。両者は「自然科学・人文社会科学」、「身体・精神」、「疾病・病(やまい)」、「集団・個人」、「キュア・ケア」、「分析・コミュニケーション」、「エビデンス・ナラティブ」、「量的・質的」などの多様な概念を包括します。しかし必ずしも二項対立概念ではなく、多様な臨床現場でそれらの「調和と統合」を実践することこそが、慢性期医療の神髄であるという強い思いを込めました。
本学会で企画するシンポジウム、講演、対談等の中心となる内容は、学会テーマとリンクする慢性期医療の現場における諸問題です。多くの職種が一堂に会して、会場では慢性期医療の神髄に触れ、同時に全国住みたい町ランキング11年連続第1位の、進化する海辺の大都市横浜も満喫しましょう。
ぜひ、積極的な演題登録と会場参加登録をお願い申し上げます。