会長挨拶
第69回日本音声言語医学会総会・学術講演会
会長 大島 猛史
(日本大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野 教授)
このたび第69回日本音声言語医学会総会・学術講演会を開催させていただくことになりました。本学会は1956年に設立された歴史ある学会です。このような歴史ある学会を今回、主催させていただくことになり、大変光栄です。このような機会を与えていただきました梅野博仁理事長、香取幸夫前理事長ならびに役員、会員の皆様に心より感謝申し上げます。当教室では1974年に第19回総会・学術講演会を担当させていただいて以来、実に50年ぶりとなり、教室員一同、開催に向けて準備してまいりました。
さて、開催形式は、昨年と同様に現地開催のみといたします。対面での討論は、議論を活発にし、理解を深め、それが新たな発見につながります。お互いの顔を見ながらコミュニケーションをとることが学会の本来の姿であり、醍醐味でもあります。現時点ではオンデマンド配信は予定しておりません。多くの会員の皆様に会場に足を運んでいただけることを期待しています。
本学会のテーマは「音声言語医療の知と技 未来へ向けて」とさせていただきました。音声言語はわれわれヒトが社会的、文化的生活を送る上で欠かせないコミュニケーションの基本です。われわれはそれを科学的に探究し、解明し、さらに医療として社会に貢献します。そして、本学会は多様な立場の多職種の研究者が集まっていることが大きな特長です。様々な視点から創造性豊かな研究、医療の創意工夫が生まれ、未来につながります。現在の科学技術の進歩には驚かされます。特に生成AIについては、2022年11月にChatGPTが公開され世に出てあっという間に大衆化され多くの分野で活用されています。このようなデジタルでの進歩と並行してわれわれ医療人の、これまで培ってきたいわばアナログの知と技も未来に向けた創造性ある医療の進歩に貢献します。知と技を再認識し、未来の音声言語医療につながるイメージが得られることを期待しています。
特別講演は「サイエンティフィックイラストレーション〜観察と描写で自然の魅力を伝える〜」(日本大学芸術学部 木村政司先生)です。木村先生は医学や昆虫学のサイエンティフィック・イラストレーションを専門にされています。先生の仕事ぶり、アートを越える数々の作品は本学会のテーマにある「知と技」に通じ、医学と芸術の知識と経験を共有することで音声言語医療の未来へのヒントが得られるのではないかと期待しています。
シンポジウムは4題企画いたしました。シンポジウム1「音声言語医学領域の基礎医学と臨床応用の可能性」では音声言語研究の最先端にある知と技を取り上げます。シンポジウム2「痙攣性発声障害の診療最前線:その知と技~客観的評価方法開発を目指して~」、シンポジウム3「Dysarthria(発語運動障害)診療の手引きのCQ解説と症例検討」では昨年取り上げた痙攣性発声障害とdysarthriaを今年も話題とし、さらに深く掘り下げます。シンポジウム4「小児人工内耳の早期化による聴覚障害児の変化~音声言語発達から教育環境まで~」では小児人工内耳について音声言語発達から教育環境について医師、言語聴覚士の立場から議論していただきます。
パネルディスカッション1「私ならこうする経口的喉頭手術:術後のより良い音声を目指して」では繊細な技術が求められる手術の「知と技」を4人のスペシャリストに紹介してもらいます。パネルディスカッション2「音声言語障害専門医と言語聴覚士の役割分担:お互いの本音」では多職種連携、チーム医療の場でのお互いの本音が聞けるのではないでしょうか。
3つの教育講演では、「神経筋疾患の嚥下障害と摂食嚥下支援」、「音声言語医療のための音に関する基礎知識」、「声が高い・声が低いをなおす甲状軟骨形成術」について、それぞれ最新の話題を含みつつも初学者にも理解でき、明日からの仕事に役立つ内容になるように企画いたしました。
学術とは少し離れて、Doctor-Artist session「二刀流で輝くために―音楽家として、耳鼻咽喉科医師として―」を企画しました。古代より医学と芸術が深い関係にありました。両者を併せ持つたぐいまれなスペシャリストの方々から新たな知と技、方法論のヒントが引き出されるのではないでしょうか。音楽演奏もあり、会員の皆様には学会の疲れを癒し、リラックスして楽しんでいただけると思います。
一般演題では音声言語医療に関する幅広い演題を登録していただきました。会員の皆様には深く感謝申し上げます。さらに英語で発表するセッションを2群設けることができました。音声言語医学の国際的な情報発信に向けてこれから国際的に活躍しようと考えている若手研究者のモチベーションを高めることができれば幸いです。
会員懇親会は学会初日に学会場である学術総合センターの隣に位置する如水会館で開催予定です。全国の多くの研究者の方々との交流はもちろん、学会での疲れを癒していただける場にするよう準備をしているところです。
今年もポストコングレスセミナーを会期後の10月19日(土)に学会場である学術総合センターで行います。テーマは「嚥下障害診療における医師、言語聴覚士、栄養管理士の役割とその連携」です。なお、セミナーの後には第3回音声言語認定医/認定士資格試験を行います。
学会場となる学術総合センター(一橋講堂)は千代田区一ツ橋にあり、いわば東京の中心に位置しています。ビジネス街の高層ビルとともに皇居の緑を間近に見ることができ、都会の喧騒の中のオアシスといったところでしょうか。10月の東京は、紅葉にはまだ早いですが、暑さも落ち着いて行動しやすくなる季節です。皇居周辺での散策、ジョギングも気持ちよいでしょう。徒歩圏内にある神保町の古書街、御茶ノ水の楽器街、秋葉原の電気街に足を運んでみてもよいかもしれません。
多くの会員の皆様にご参加頂けますよう、教室員一同、心よりお待ちしております。