会長挨拶
- 第78回日本めまい平衡医学会総会・学術講演会
- 会長 將積 日出夫(富山大学 耳鼻咽喉科学講座 教授)
この度、第78回日本めまい平衡医学会総会ならびに学術講演会を富山大学の担当で開催させて頂きますこと、誠に光栄に存じます。富山市での開催は1984年初代教授の水越鉄理会長、2002年2代目教授の渡辺行雄会長が担当して以来17年ぶりで3回目となります。
さて、今回の学会は、30年続いた「平成」から新しい年号に変わった最初の年に開催します。めまい平衡医学の領域でも新しい動きが始まっています。まず、診断基準としては2017年の本学会での診断基準改訂、バラニー学会による前庭性片頭痛、持続性知覚性視性誘発めまいなどの診断基準が発表されました。検査法としては従来の温度刺激検査からvideo Head Impulse Test(vHIT)検査と耳石機能検査(cervical VEMP、ocular VEMP、Head tilted SVV)検査が追加され、5種類の末梢前庭器全てと上・下前庭神経の機能を個別に評価することができるようになりました。治療では中耳加圧装置による中耳加圧治療が昨年9月に保険収載されています。このような最近の流れから、今回の学会のテーマを、「めまい平衡医学 新時代へ」と題しました。諸先生方におかれましては、新しいめまい平衡医学を切り開くパイオニアとしてご自身の研究成果を発表していただければ幸いです。
特別講演では東京大学卓越教授である梶田隆章教授に「神岡地下での基礎科学研究」というタイトルで講演していただきます。先生はニュートリノ振動の発見により、2015年にノーベル物理学賞を受賞されました。講演では、岐阜県飛騨市神岡で建設中のKAGRAによる重力波の目指すサイエンスを含めて、基礎科学研究のあり方と考えるヒントを提供していただける事になっています。
外国からは複数の研究者を招聘しました。まず、Barany学会の前会長であり、現在、Acta Otolaryngologica誌のChief-in-editorを務めておられるMatti Anniko先生です。富山大学では2000年からMeniett®を用いた中耳加圧治療の臨床研究を行ってきましたが、先生にはその導入に深く関与していただきました。ご講演では、100周年を迎えたActa Otolaryngologica誌の歴史をお話しいただける予定です。二人目は、Imperial College LondonでNeuro-otology UnitのClinical Professorを務められているAdolfo Bronstein先生です。三人目は、College de FranceのProfessorを務めておられるAlain Berthoz先生です。両先生は世界的に有名な脳神経科学者であり、Barany学会等で発表を聞いて感銘を受けた諸先生方も多いのではないかと思います。また、お二人の研究室には、我が国から数多くの研究者が留学されたことでも知られています。ご講演では、新時代に突入するめまい平衡医学の基礎である脳神経科学に関する国際的な話題を分かりやすく紹介していただける予定です。
最後に、皆様をお迎えする富山市は、東に海抜3000m級の立山連峰を間近に臨み、北には海の幸が豊富な富山湾が控えます。「パノラマ キトキト(富山の方言で新鮮なこと) 富山に来られ」が富山県の観光のキャッチフレーズです。しろえびなどの新鮮な富山湾の幸を肴に富山の地酒を舌鼓しながら、新時代を迎えるめまい平衡医学について、夜遅くまで語り合っていただければ幸いです。また、学会前日は祝日となります。立山黒部アルペンルートにある日本最高標位の「みくりが池温泉」、トロッコでしか辿り着けない黒部峡谷鉄道の「黒薙温泉」、船でしか行けない一軒宿であり、サスペンス劇場の舞台にもなった庄川「大牧温泉」などの秘湯をこの機会にご堪能いただければと思います。諸先生方を富山でお待ちしています。よろしくお願い申し上げます。