会長挨拶

第31回日本耳科学会総会・学術講演会 会長 小島 博己

第31 回日本耳科学会総会・学術講演会
会長 小島 博己 
(東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科学教室)

この度、第31 回日本耳科学会総会・学術講演会を令和3 年(2021 年)10 月13 日(水)~ 16日(土)の4 日間にわたり東京で開催させていただくことになりました。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の関連学会で最多の会員数で最大規模の日本耳科学会ですが、伝統ある本学会を当教室が担当させていただくことは、大変光栄であるとともに身の引き締まる思いであります。

本学会では、「その先の医療へ」をテーマに掲げ、特別講演、シンポジウム、パネルディスカッション、テーマセッション、若手公募セッションなど、多彩で幅広い分野で、様々なプログラムを企画しております。基礎から臨床まで注目度や関心度の高いテーマを揃え、興味深い企画が盛り沢山です。また、日本耳科学会各種委員会、ワーキンググループのご指導のもと例年行われている教育セミナー、ハンズオンセミナー、側頭骨組織インタラクティブ・レクチャー、組織標本自由観察など、若手教育に向けたプログラムも充実しております。

特別講演では、医療AI と再生医療という今後の医療の発展には欠かせない2 つのテーマで、それぞれの第一人者のお二人の先生にご講演をいただきます。医療AI の研究開発において経験豊富な国立研究開発法人国立がん研究センター研究所医療AI 研究開発分野・分野長で一般社団法人日本メディカルAI 学会・代表理事を務める浜本隆二先生にご講演いただきます。また、再生医療においては画期的な細胞シート技術を開発し、そのヒト臨床応用を数多く手がけている東京女子医科大学先端生命医科学研究所・教授の大和雅之先生にご講演いただきます。

8 題のシンポジウムでは、最新のトピックや注目の高いトピックについて、手術に関するものから日常診療に役立つテーマまで幅広く企画しました。国内の若手から経験豊富な演者の先生方にご講演いただきます。パネルディスカッションは5 題のテーマを用意し、各分野の第一線で活躍する耳科医や研究者による熱い議論の場となることが期待されます。COVID-19 についての海外セッションでは、COVID-19 パンデミックの状況下で各国の対応や診療状況などをご報告していただき、各国の経験から得られた知見を共有することで、今後の新規感染症対策に活かせるようなディスカッションになるのではないかと思います。テーマセッションでは基調講演にスタンフォード大学のAlan G。 Cheng 先生を迎え、内耳基礎研究のエキスパート達により最新の研究をご紹介いただきます。

公募セッションでは、学会テーマである「その先の医療へ」をもとに「―次世代からの発信―」として45 歳以下の次世代の若手医師から企画を募集しました。厳選な選考の結果、5 題の企画を採択し、テーマは臨床、基礎研究、産学官連携と多彩な企画内容で、次世代を担う若手医師の共演に注目です。

日本耳科学会30 周年記念に際して日本、韓国合同の追悼公演とテーマセッションを開催します。耳科学の発展に多大な貢献をされた柳原尚明先生、Jong Seon Kim 先生のご逝去を悼んで、両先生のご功績を振り返り、それぞれの先生とご縁のある羽藤直人先生とKorean Otological Society 理事長のJa-Won KOO 先生に、両先生の業績や思い出を中心にご講演いただきます。また、テーマセッションとしては、「Innovative Medicine(新規医療)」と「Intractable otitis media(難治性中耳炎)」の2 つのテーマに関する日韓両国でのトピックについて、それぞれの第一人者の先生方にご紹介いただきます。

耳鼻咽喉科領域講習対象の8 題の教育セミナーは、豊富な知識と経験を持つ講師の先生方のご講演は、例年、若手教育のみならず、専門医にとっても最新の知識をアップデートする上で重要なセミナーとなっております。また、このコロナ禍にも関わらず多くの企業からの共催をいただき13 題のランチョンセミナーも予定しております。こちらも経験豊富な講師の先生によるご講演をお楽しみください。

また、耳管ピン手術実施医制度ワーキンググループの主催で、会期中に日本耳科学会は耳管ピン手術実施医の認定に必要な耳管ピン手術実施医認定講習会を開催いたします。近年、保険収載が認められた耳管ピン手術の今回が第1 回の講習会で初めての開催となり、講義と手術手技実習を実施する予定です。

上記以外にも、日本耳科学会各種委員会報告や専門医共通講習(感染対策)、このコロナ禍の状況においても多くの一般演題(口演およびe- ポスター発表)の登録をいただきました。

今回の会場は「ヒルトン東京お台場」です。参加していただく方々の会場内での移動がスムーズになるように講演会場、機器展示会場などをすべてワンフロアー内に収めました。この会場は、ゆりかもめ「台場駅」に直結し、東京駅・品川駅からはタクシーで約20 分、羽田空港からもタクシーで約15 分と、全国からの先生方がご参加いただくには非常にアクセスの良い所にあります。また東京ベイエリアを一望できる素晴らしい会場です。各施設や所属機関の出張規定等をご勘案の上で可能であれば、ぜひ現地に足を運び、学会にご参加いただき楽しんでいただければと思います。

新型コロナウイルス感染症拡大の状況ではありますので、開催に際しましてはハイブリッド方式(現地開催およびライブ配信・オンデマンド配信の併用)での開催を予定しております。また、3密を回避するために現地での参加登録は行わず、事前参加登録を含めオンライン(Web)による参加登録となります。会場内のソーシャルディスタンスの確保など、運営においては徹底した感染防止対策や十分な配慮と工夫を求め、ご来場いただいた先生方に安心してご参加いただけるよう務める次第です。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い刻々と変化する状況で、今まさに医療界全体でどのように医学を発展させていくか学会のあり方も問われています。本学会の「その先の医療へ」というテーマを考案し掲げた際にはまだコロナ禍以前でしたが、現在、世界は新型コロナウイルス感染症のパンデミックの状況で、このテーマを掲げた当初からは全く予想だにしない未曾有の状況になっております。しかしながら、コロナ禍に翻弄されるこの状況下においても耳科学ではまだまだ解決すべき課題は山積しており、私たち耳科医は今後の耳科学の発展のために学びや研究活動の歩みを止めてはいけないと考えます。その発展には、奇しくもコロナ禍以前に掲げた「その先の医療へ」が今まさに求められていると感じております。世界の歴史はこれまでにも何度も大きな災難にみまわれてきましたが、人類の英知を結集して困難を乗り越えて現在までの発展を遂げてきました。本学会が耳科学の発展に少しでも貢献できればと思い、教室、同門をあげて、実りある学術集会となるよう鋭意準備してまいりました。多くの皆様にご参加いただければと思います。教室一同、心からお待ちしております。

このような状況の中、本学会を開催できることに大変感謝いたしております。開催にあたりご賛同をいただきました本学会役員をはじめ、会員の先生方やご協賛いただいた多くの企業の方々に、この場を借りて改めて心より御礼申し上げます。

最後になりますが、新型コロナウィルス感染症の1 日も早い終息と皆様のご健康を祈念いたしております。