会長挨拶

会長 北川 昌伸

第110回日本病理学会総会
会長
 北川 昌伸
(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 包括病理学分野 教授)

この度、第110回日本病理学会総会を担当させていただく北川昌伸でございます。東京医科歯科大学が春の総会を担当させていただくのは初めてのことであり、大変光栄なことと存じます。

本総会は、現地開催とWeb開催のハイブリッド形式で開催させていただく予定としておりますが、具体的な開催形式につきましては今後の新型コロナウイルス感染拡大の状況に鑑みて運用方針を決定して参りますので皆様におかれましては是非万障お繰り合わせの上、ご参加いただきたいと存じます。現地開催の会場としては東京・新宿の京王プラザホテルを予定しております。東京での開催となりますと2年ぶりということになりますが、前回とは大きく社会情勢が異なっており、新たな with-corona時代における学会開催のあり方が問われる総会ともなると考えます。細心の注意を払って皆様に安心してご参加いただける環境を整備する所存です。ハイブリッド総会となれば春の総会としては初めてとなる形式ですが日本病理学会が掲げてきた「病理学に関する学理及びその応用についての研究の振興とその普及を図る」という大前提のもとに、その学術活動を社会に発信するためにも多くの工夫をすることが必要なことと考えております。その大前提をふまえた上で、ゲノム医療やAI技術、ビッグデータの医療への応用が現実のものとなりつつある時代の流れに病理学会会員が対応できるような内容のプログラムを編成したつもりです。今回の『病理学の挑戦 ― 伝統的学問からインテリジェントパソロジーまで』 というテーマのもとに会員、特に若手による時代の最先端の研究内容を取りあげ、さらに病理学会会員の研究内容を世界へ発信していくことを目指そうと考えています。

病理学の原点である伝統的な形態学は、病理医の経験に基づく豊富な過去の情報の蓄積に加えて、分子生物学的情報、IT情報、データサイエンスの手法もとり入れることで、さらなる発展をすることと考えられます。医学全体が、がんゲノム医療を含め治療学の進歩という観点から未曽有の速さで進歩していく中、病理学はどのような形で発展していくのが理想的なのかについて考えてみたいと思います。

上記のテーマのもと、特別シンポジウム3題、シンポジウム3題、ワークショップ17題を企画させていただきました。特別シンポジウムは、最近の医療の中でもトピックである、AIとデジタル医療、再生医療の最前線、ゲノム医療と病理、に焦点を当てさせていただきました。シンポジウムでは、総論的なトピックとして、がんと免疫、がん幹細胞の病理、エピゲノムの病理、モデル動物の病理学的研究支援、形態学と新技術、起業イノベーション、さらには、病理に関わる医療政策、専門医制度の今後と病理医育成、病理学と研究倫理、病理診断の標準化について議論いただきます。

ワークショップでは、全身の臓器を対象として、臓器病理学の最近の進歩として、各論的な企画をお願い致しました。海外からのセッションは遠隔セミナーの形で英語でのレクチャーを行う予定です。今回の宿題報告は、伊藤 隆明 教授(熊本大学大学院生命科学研究部機能病理学講座)、池田 栄二 教授(山口大学大学院医学系研究科病理形態学講座)、範 江林 教授(山梨大学大学院総合研究部医学域基礎医学系分子病理学講座)が担当され、それぞれ今まで展開されてきた研究の集大成を報告されます。

一般演題としての口演発表、ポスター発表、若手ポスター発表の形式については状況を鑑みて今後決定する予定ですが、どのような形式になったにせよ活発なご議論を宜しくお願い致します。2021年は東京オリンピックが開催される予定であり、街の様子も変わっているかもしれません。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で学会活動にもいろいろな制約を受ける可能性もあることと思われますが、学会の内容は可能な限り例年に近い形で開催する予定ですので、出来るだけ多くの方に参加いただき、3日間の企画を楽しんでいただければと思います。