基礎ハンズオンセミナー
お知らせとお願い
臨床医として日々直面する現在の医療で解決できない病態に対しては、継続した基礎研究は欠かすことはできません。近年、臨床と基礎研究を土台とした病態解明が様々な角度から行われるようになり、臨床医はこれまで以上に疾患に対する理解を求められています。そのため、病態を紐解く基礎研究の重要性が再認識されています。日本鼻科学会では、学会主導による『鼻科基礎ハンズオンセミナー』を2014年より開催しています。本セミナーは、施設間の横断的連携を築き、本邦から新たな知見を発信する土壌を育成することを目的とし、各施設で研究を継続している医師が、基礎研究のノウハウについて実演を踏まえて解説いたします。
本年も、現地会場における実技講習とビデオ講習を企画いたしました。各講習の詳細は、下記の通りです。実技講習の受講者には、受講証明書をお渡しいたします。
本セミナーでは、これから基礎研究を始める先生や、現在基礎研究を行っている先生方に幅広くご参加いただきたいと思います。年齢や経験などは一切問いません。各先生方と基礎研究の面白さ、やりがい、苦労話など、いろんな意見を交換いただきたいと思います。ビデオ講習を担当された先生方をはじめ、基礎ハンズオンセミナー委員の先生方も会場でお待ちしていますので、是非とも多数のご参加をお待ちしています。
基礎ハンズオンセミナー
日時
2024年9月26日(木)第1部 13:30~15:00 第2部 15:00~16:30
会場
京王プラザホテル 本館4F 花B+C (第63回日本鼻科学会 ハンズオンセミナー会場)
参加申込み方法
受講料は無料です。(但し、第63回日本鼻科学会の参加証必須)
実技講習(ブースA、ブースB、ブースC)については、参加登録が必要です。
参加希望者は、下記申し込みフォームからお申し込みください。
希望人数が多数の場合は、事務局にて調整致しますのでご了承ください。
なお、ビデオ講習(ブースD)については、参加登録は不要です。
基礎ハンズオンセミナー事前参加申し込みフォーム
ブースA:基礎講習演題1【参加登録必要】
バイオインフォマティクス入門
中山次久(獨協医科大学)
第1部 13:30~15:00 / 第2部 15:00~16:30
生命科学と情報科学の融合分野であるバイオインフォマティクスは、現在医学において重要な役割を担っています。この分野の醍醐味は、大量の生データから有用な結果を抽出し、病態に対する理解を深める点です。中山先生には、バイオインフォマティクスを始めようとする先生に向けても、分かりやすく講義していただきます。データ解析にパソコンを使用しますので、ご自身のパソコンをご持参ください。
ブースB:基礎講習演題2【参加登録必要】
PCRの基本とその応用~プライマー設計から遺伝子組み替え技術まで~
柴田博史(岐阜大学)
第1部 13:30~15:00 / 第2部 15:00~16:30
PCRによってDNAやRNAを検出することは、基礎研究だけでなく日常診療においても汎用されています。PCRは基礎研究において、最初に行う手法の一つであり、応用の幅があることも特徴の一つです。柴田先生には、PCRの基礎から応用まで詳しく講義していただきます。
ブースC:基礎講習演題3【参加登録必要】
ELISAの基礎~サンプル準備から測定まで~
清水杏奈(福井大学)
第1部 13:30~15:00 / 第2部 15:00~16:30
タンパクの解析には、免疫組織化学で局在を評価する方法以外に、タンパク量を直接測定するELISAという手法があります。市販のキットも多数販売されており、比較的容易にできる手法の一つです。清水先生には、ELISAの基礎と手技のコツを講義していただきます。
ブースD:ビデオ講習【参加登録不要】
このコースは、これまでの実技講習をアーカイブしたものです。事前参加登録の必要は無く、会場に設置されたパソコンから視聴いただけます。
非脱灰硬組織凍結切片作製法の手技の基本とポイント
細矢 慶、大久保公裕(日本医科大学)
尹 泰貴、神田 晃、岩井 大(関西医科大学)
病理組織は、病態を解明する上で非常に重要であるが、従来のパラフィン包埋方法による組織標本作成では、固定や脱灰などで長時間を要するだけでなく、その過程で多くの情報が失われます。今回は、ビデオ講習として、特殊な凍結切片作製用の粘着フィルムを使用することで、固定や脱灰を行わずに、骨などの硬い組織を含む試料でも形態を良好に保ったまま1時間程度で切片を作成可能な非脱灰硬組織凍結切片作製法(川本法)を紹介します。
鼻腔組織からのRNA抽出およびqPCR解析
鈴木正宣、中薗 彬(北海道大学)
全てのタンパク質は遺伝子からメッセンジャーRNA(mRNA)へと転写された後、タンパク質へと翻訳されます。そのため、転写されたmRNAを定量化することでタンパク質の増減を評価することができます。qPCRはインターカレーション法とプローブ法に大別されますが、今回は比較的安価に行うことができるインターカレーション法について解説します。また、実際にqPCRを行う際に必要なRNA抽出や相補的DNA(cDNA)への逆転写も合わせて紹介します。
末梢血及び組織からの単核球の分離方法
末梢血と組織(口蓋扁桃と鼻茸)からの単核球の分離方法に加え、鼻茸からの多核球の分離方法について、動画によりできるだけわかりやすく解説します。
- ヒト血液のサンプリング手法:末梢血からのPBMCの分離(意元義政 福井大学)
- 鼻茸組織からの細胞単離法(尹泰貴 関西医科大学)
- ―扁桃からの単核球分離―(熊井琢美 旭川医科大学)
ヒト気道上皮細胞・線維芽細胞の培養法~ヒト鼻粘膜を用いた基礎実験に繋げる~
戸嶋一郎、清水志乃(滋賀医科大学)
鼻副鼻腔組織から得られる上皮細胞や線維芽細胞は、組織の構成要素としてだけでなく、刺激に応じてサイトカインなど様々なメディエーターを放出する免疫細胞としての働きも有しています。市販されている正常ヒト気道上皮細胞(normal human bronchial epithelial cells: NHBE cells)、ヒト気道上皮細胞株(粘液産生モデル:NCI-H292細胞)、ヒト正常線維芽細胞の基本的な培養法や継代法や刺激法などについて解説します。
蛍光免疫染色法による鼻腔組織評価の実践
桑田文彦、大西弘恵、大森孝一(京都大学)
医学研究における組織評価方法としてヘマトキシリンエオジン染色を始め様々な組織染色法が用いられています。凍結切片を用いた蛍光免疫染色法による鼻腔組織評価の実践について解説します。遺伝子改変マウスであるOMP-GFPマウスの鼻腔組織切片と、抗OMP抗体を用いて染色した野生型マウスであるC57BL/6の鼻腔組織切片の比較により、本法の有効性を実証します。また、鼻腔上皮という複雑な構造とそれを構成する個々の細胞種に関しても、多重染色法を用いた組織標本によりその形状と組織内分布につき紹介します。
脂肪幹細胞移植の嗅神経再生への影響:組織学的、行動学的観察
石倉友子(金沢医科大学)
嗅覚障害に関する研究は近年の大きなトピックの一つであり、様々な分野から解析されています。どのように嗅神経が再生し、感覚機能が回復していくかについては、まだ不明な 点が多く、今後発展性のある分野の一つであります。本講習は嗅神経再生のメカニズムを解析する貴重な実技講習となっています。脂肪幹細胞移植による嗅神経再生と、その評価 方法などについて解説します。
免疫磁気分離法によるPBMCからヒトCD4+T細胞の分離
松山敏之(群馬大学)
CD4陽性T細胞は、腫瘍疾患や炎症疾患で主体となる細胞の一つであります。末梢血からの分離方法ができれば、ELISAや遺伝子発現解析などのin vitroの実験に応用可能となりま す。CD4陽性T細胞の分離方法とエッセンスを解説、講習後すぐに着手できる手技であり、様々な先生方に習得いただける内容となっています。
外傷性嗅覚障害モデルマウスにおける抗炎症薬投与による嗅神経再生の組織学的評価および行動学的観察
西田幸平(三重大学)
傷害を受けた嗅神経がどのようにして再生していくのかを見ることは、嗅覚障害を理解するうえで重要なポイントです。このコースでは、外傷性嗅覚障害モデルマウスを用いて、嗅神経が再生して嗅覚が回復する過程の一連の実験手技と評価方法について解説します。
Cytometric Bead Arrayを用いたサンプル中サイトカイン濃度の同時測定法
津田 武、武田和也(大阪大学)
Cytometric Bead Arrayは、フローサイトメトリーを用いて、1サンプルから多種類のタンパク(サイトカイン、ケモカイン、増殖因子など)を、同時に測定・定量解析できる方法です。このコースでは、Cytometric Bead Arrayのエッセンスを解説します。
パラフィンブロックからの組織切片スライド作製と基本的な染色法
嶋村晃宏、福井研太(関西医科大学)
耳鼻咽喉科医が基礎研究を行う上でのメリットは、生検や手術で直接組織を採取できるという点です。パラフィン組織切片を用いた様々な染色は、病態解明の足掛かりとなり、in vitro系への橋渡しをすることができます。このコースでは、パラフィンブロックからの組織切片作製や脱パラフィン、そして簡単な染色について解説します。
問い合わせ先
一般社団法人 日本鼻科学会事務局
jrs@nacos.com